概要 | |
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目的 | Capital Expenditures vs. Operating Expensesの理解 |
参考 | -Capital Expenditures vs. Operating Expenses: What’s the Difference? -修繕費か?資本的支出か? |
1. CapExとOPEX
固定資産に関して行われる支出はCapEXとOPEXに分けることができます. CapExとOPEXの概要は以下となります。
分類 | 説明 |
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CapEX | Capital Expenditures CapEXとは、費用が発生した期だけなく一会計期間を超えて使用されると予測される資本(物・サービス含む)への支出費用を指します。設備投資等資本支出ともいわれます。一例として、ネットワーク設備構築費はCapEXとなります. |
OPEX | Operating Expenses, Operating expenditures 業務費や運営費など日々事業運営をしていくために、継続して必要となる費用を指します。支出年度の費用として取り扱われます. |
固定資産の取得時点で行われる支出は、資産を使用可能な状態にするまでに要した付随費用も含めて、すべてCapEXとして取得原価に含められます. 固定資産の使用を開始した後に行われる支出のうち、改良の為の支出はCapEXとされますが、単純な維持・管理のための支出はOPEXです.
例
残存耐用年数が5年の建物について、当期首に大規模な改修を行い、現金 ¥6,000,000を支払った. その結果mこの建物の使用可能年数が当期首から15年となったとします. これをCapEX, OPEXに振り分ける場合、一例として、使用可能年数が5年から15年と10年延長されたので支出額の15分の10をCapEXとして処理することが考えられる
2. Capital Expenditures
Capital Expenditures(以下、CapEx)とは、企業が1年以上使用する主要な物理的設備やサービスを購入するために使用する資金のことです。例えば、企業は固定資産の増加や改善のために設備投資を行う場合、当該支出はCapExとみなされます。
CapExの例として、
- 製造設備の取得
- 部品の金型の取得
- 建物の建設費用
- 製造設備の修繕費
- ラップトップなどのハードウエアの購入費
ただし、具体的な支出がCapExに該当するか否かは事業の性質やその他関連状況によって定まります(後述)。
国税不服審判所平成17年4月26日裁決:資本的支出か?否か
概要 | 説明 |
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論点 | 病院建物の外壁改修工事が修繕費か?資本的支出か?どちらに該当するのか? |
判決 | 修繕費だとしても、使用可能期間の延長、価値増加が認められない場合は必要経費になり、損金算入することができる |
意義 | 「ピン止め工法やアクリル弾性塗装が行われた場合、通常は建物の耐用年数が増加する」にも関わらず、建物の使用可能期間が延長したと認めることも、本件建物の価額が増加したと認めることもできない場合は全額が必要経費になる、と判断を示したこと。 |
今回問題になった病院外壁改修工事に係る請求内訳表です。
(単位:円)
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| 品 名 |数量|単価| 金 額 |
|-------------------+--+--+----------|
|①|仮設足場(東南北西面) |一式| -| 3,578,000|
|②|タイル面改修工事(東西小口タイル)|一式| -| 1,827,200|
|③|外壁塗装工事(東南北西面) |一式| -| 4,040,350|
|④|塔屋塗装及び屋上塗装工事 |一式| -| 760,250|
|⑤|その他(共通仮設西廃材処分) |一式| -| 934,000|
|-+-----------------+-----+----------|
|⑥| 小 計(①+②+③+④+⑤) | |11,139,800|
|-+-----------------+-----+----------|
|⑦|諸経費 |一式| -| 650,000|
|⑧|磁器タイル浮き部工事(東南北面) |■■■■■| 2,172,000|
|⑨|クラック工事(東南北面) |■■■■■| 1,244,000|
|⑩|浮き部工事(西北面) |■■■■■| 810,000|
|⑪|クラック補修工事(西北面) |■■■■■| 458,000|
|⑫|屋上手摺及び看板工事 |一式| -| 220,000|
|-+-----------------+-----+----------|
|⑬| 小 計(⑦+⑧+⑨+⑩+⑪+⑫)| | 5,554,000|
|-------------------+-----+----------|
| 合 計(⑥+⑬) | |16,693,800|
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判断基準として関連する所令として、所令181は(1) 当該資産の使用可能期間を延長させる部分に対応する金額, または(2) 当該資産の価額を増加させる部分に対応する金額、が資本的支出としています。裁決において国税不服審判所は下記のように判断しました:
- ピン止め工法やアクリル弾性塗装が行われた場合、通常は建物の耐用年数が増加すると考えられるが、本件建物がかなり老朽化しているため、アクリル弾性塗装であっても、どの程度耐久性があるか不明であり、また、建物のすべての面についてピン止め工法を行っていないから、同工法を施工していない部分が将来浮き部となる可能性があることが認められ、本件工事によって、本件建物の使用可能期間を延長させると認めることはできない。
- 本件工事により、本件建物の価値が増加したと認めることはできない。
- 本件工事により、本件建物の使用可能期間が延長したと認めることも、本件建物の価額が増加したと認めることもできず、本件建物についてはその修繕は必要不可欠であり、本件工事の手法は一般的な工法であったと認められるから、本件工事は当該固定資産の通常の維持管理のために行ったものであり、これを修繕費と認めるのが相当である。
3. Operating Expenses
Operating Expenses(以下、OPEX)は業務費や運営費など日々事業運営をしていくために、継続して必要となる費用を指します。
OPEXの例として、
- Rent
- Utilities(水道光熱費)
- 給料や年金保険料
- 販売費及び一般管理費(SG&A: selling, general, and administrative expense) に該当する諸費用
- R&D
- 固定資産税などの税金
- 出張費
CapExと異なり、OPEXは、その年に全額損金算入することができます。通常はCapExに分類されるアイテムでも、購入する代わりにリースすることを選択した場合は、OPEXとみなされることがあります。この処理は、会社のキャッシュフローが限られていて、税務年度にそのアイテムの総コストを控除したいを場合には、有力な会計オプションとなります。
4. ソフトウェア管理とCapEx
既存業務効率化や新規サービスローンチに伴い新しいシステムを構築したり、新たにプログラムを開発する場面は多々あります。これら長期に渡って企業が便益を享受するものである一方、費用は契約体型にもよりますがone-shotで発生するのでCapEx処理されるべきですが、保守運営費用、制作費はOPEXとして処理しなくてはならず、この境界線がたびたび混乱を招く場合があります。
ここではソフトウェアの取得に係る処理にしぼり,会計上と税務上の取扱いを整理し,税務処理を行う上での留意点をまとめます.
会計上のソフトウェアの定義
会計上,ソフトウェアは次のように定義されています:
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ソフトウェアとは,コンピュータを機能させるように指令を組み合わせて表現したプログラム等をいう.
そして,その概念・範囲として,ソフトウェアとは,コンピュータ・ソフトウェアをいい,その範囲は
(1) コンピュータに一定の仕事を行わせるためのプログラム
(2) システム仕様書,フローチャート等の関連文書
発注内容 | 事例 | 区分 |
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プログラム購入 | OS・アプリ䛾購入 | CapEx |
プログラム開発にかかるコスト | 要件定義~開発~システムリリースまでにかかる費用(PMO、支援含む) リリース後䛾エンハンス開発 パッケージ䛾機能䛾拡張、改修、IF構築 |
CapEx |
ホームページ作成のうち仕組みづくりの部分 | JavaやPerlといったプログラミング言語を用いて、データベースやネットワークにアクセスする仕組みが含まれているもの | CapEx |
ベンダー・アプリ選定前打ち合わせ費用 | 導入決定されていない計画段階・プランニングフェーズでかかる費用 | OPEX (例: 出張旅費等) |
プログラム開発を伴わない業務委託 | リサーチ、業務改善コンサル費用など | OPEX (委託費) |
プログラムリリース後サポート | データ・マスタ移行・変更、運用サポート、ハイパーケア、バグ修正 | OPEX (委託費) |
ソフトウェア保守料 | 保守・運用費用 | OPEX (委託費) |
ホームページ作成䛾うちコンテンツ部分制作費 | HTML作成とそれに伴う画像、文字、デザインのみで構成される場合。機能を追加する場合 (ただし、商品検索機能、ログイン機能など。プログラム設計を含む場合にはCAPEXに該当) |
OPEX (制作費) |
ソフトウエア費用計上タイミング
「委託費」「制作費」は一時費用として、その月/年の費用となりますが、「ソフトウェア」の稼働開始月から使用期間(通常5年とする)に渡って費用化されます。制作途中のソフトウェアにかかる費用を計上したい場合はソフトウェア仮勘定を用います。建設仮勘定のソフトウェア版と考えるとイメージしやすいと思います。仮勘定ですので減価償却はしません。ソフトウェアが完成して仮勘定から「ソフトウェア」の本勘定へ振替した時点から減価償却が始まります。
ソフトウェアの制作は長期にわたることが多く会計期間をまたぐこと場合が多いです。その場合の決算もソフトウェア仮勘定として無形固定資産で処理し、貸借対照表ではソフトウェアの本勘定の下に記載します。
よくあるミス
ソフトウエアとして資産化すべきアイテムを、誤って委託費・制作費として処理した場合、申請の会計期の費用過大=事業利益が過少という問題が発生してしまいます。
(注意:GitHub Accountが必要となります)