概要 | |
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目的 | 集合と確率の勉強用ノート and ポーカーの手札の確率の計算 |
参考 | - モステラーとテーブルの座り方 |
事象と集合
用語整理
用語 | 説明 |
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試行(trial) | 「サイコロを振る」等の偶然の結果を伴う行為 |
標本空間(全事象,sample space) | \(\Omega\), 確率事象の値全体、想定してる問題で起こり得る全ての事象 |
標本点 (sample point) | \(x \in \Omega\), 標本空間の元 ある試行の標本空間が有限集合であるか、無限集合であるかに従って、その試行を有限試行または無限試行と呼ぶ。 |
事象(event) | 標本空間\(\Omega\)の部分集合, \(A \subset \Omega\) |
根元事象 (elementary event) | ただ一つの標本点だけからなる事象 |
集合演算の基礎
ある集合 \(U\) の部分集合 \(A\), \(B\) について
分類 | 説明 |
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和集合(union) | \(A\cup B = \{x; x\in A \text{ or } x\in B \}\), 事象A, Bの少なくともどちらかが起きる事象 |
積集合(product, intersection) | \(A\cap B = \{x; x\in A \text{ and } x\in B \}\), 事象A, Bがともに起きる事象 |
差集合 | \(A - B\), \(A\backslash B\), これは \(A\cap B^c\)と同値 |
対象差(xor) | \(A\ominus B = (A\cap B^c)\cup(A^c\cap B)\) |
補集合 | \(A^c = \Omega - A\) |
事象 \(A\) と \(B\) が互いに排反する \({\stackrel{\text{def}}{\iff}} A\cap B=\phi\). \(A\) と \(B\) が同時には起こらない、ということ。事象 \(A\) は事象 \(B\) の排反事象 (exclusive events) であるという。
確率の性質
上の例に出てきた \(P\) は、 \(U\) の任意の部分集合 $ A$ を区間 \([0, 1]\)の実数に対応させる集合関数です.この集合関数を数学的に定義しようとするとm確率を定義する事象の集合から準備する必要があります.
可測集合族
確率は次の3つの性質を満たす可測集合族 \(\mathfrak{B}\)の上で定義されます:
\(\begin{aligned} \text{(M1)}\:\:\: & \emptyset \in \mathfrak{B}, \Omega \in \mathfrak{B}\\[8pt] \text{(M2)}\:\:\: & A\in \mathfrak{B} \Rightarrow A^c\in\mathfrak{B}\\ \text{(M3)}\:\:\: & A_k\in \mathfrak{B}, k = 1, 2, \cdots, \Rightarrow \bigcup^\infty_{k=1}A_k\in\mathfrak{B} \end{aligned}\)
可測集合族\(\mathfrak{B}\)の元を可測集合といい、可測集合Aに対して実数を対応させる関数\(P(\cdot)\)で、次の性質を満たすものを確率といいます:
\(\begin{aligned} \text{(P1)}\:\:\: & \text{すべての}A\in\mathfrak{B} \text{ に対して } P(A) \geq 0 \\[8pt] \text{(P2)}\:\:\: & P(\Omega) = 1\\ \text{(P3)}\:\:\: & A_k\in\mathfrak{B}, k = 1, 2, \cdots \text{ が互いに排反, i.e. }, A_i\cap A_j = \emptyset i\neq j\text{ の場合}, P(\bigcup^\infty_{k=1}A_k) = \sum_{k=1}^\infty P(A_k) \end{aligned}\)
確率は \(\Omega, \mathfrak{B}, P\)の3つに要素によって定まります. \((\Omega, \mathfrak{B}, P)\)を確率空間といいます.(P1), (P3)を満たす関数を測度(measure)といいます.
定理:余事象の定理
\[P(A^c) = 1 - P(A)\]証明
定義より
\[A\cap A^c = \emptyset, A\cup A^c = \Omega\](P3)より
\[P(\Omega) = P(A) + P(A^c)\](P2)より
\[1 = P(\Omega) = P(A) + P(A^c)\]■
定理: 部分集合と確率
\[A\subset B \Rightarrow P(A) \leq P(B)\]証明
\(A\subset B\)より
\[B = A\cup (B \cap A^c), \emptyset = A\cap (B \cap A^c)\]従って、
\[P(B) = P(A) + P(B \cap A^c)\](P1)より
\[P(A) \leq P(B)\]■
この定理を応用することで
\[P(A\cap B) \leq \min\{P(A), P(B)\}\]を得る.
定理:和事象の確率
\[P(A\cup B) = P(A) + P(B) - P(A\cap B)\]証明
\(A\cup B\)を排反事象の和として表すと
\[\begin{aligned} A\cup B &= (A \cap B^c) \cup (B \cap A^c) \cup (A \cap B)\\ &= (A - (A\cap B)) \cup (B - (A\cap B)) \cup (A \cap B) \end{aligned}\]任意の排反事象 \(A\), \(B\) に対して \(P(A\cup B)=P(A)+P(B)\), より
\[\begin{aligned} P(A\cup B) &= (P(A) - P(A \cap B)) + (P(B) - P(A \cap B)) + P(A \cap B)\\ & = P(A) + P(B) - P(A \cap B) \end{aligned}\]■
モステラーとテーブルの座り方
問題設定
ある大学の喫茶室には、一つの辺に一つの椅子がある正方形の小さなテーブルが一つある。とある心理学者は、2人組の学生たちがどのようにテーブルへ座るか興味を持って調べることにした。その心理学者はペアの学生たちを個別行動グループと共同行動グループに区別した。
- 個別行動: 同じテーブルに座っているが、別々に学習しているペア
- 共同行動: 一緒に話をしたり勉強しているペア
一ヶ月学生の行動を観測した結果、次のようなデータが得られた
グループ | 隣り合わせに座る組 | 向かい合って座る組 |
---|---|---|
共同行動 | 90組 | 45組 |
個別行動 | 2組 | 16組 |
計 | 92組 | 61組 |
この結果から心理学者は次のように主張した、「共同行動をしている状況では、隣り合って座るほうが向かい合って座るよりも好まれている。これは隣り合って座れば人々の間に親密さが保たれるし、また向かい合わないので、視線が直接交差することがないという理由からである。」
この推論は正しいか?
解答例
学生たちが好みを持たない、つまり全く無作為に座る席を選ぶ場合を考える。4つの椅子が各辺についている正方形のテーブルの座り方は全部で6通りある.
どの組合せを選ぶかがどうように確からしい(=無作為に選ぶ)場合、
\[\begin{aligned} Pr(\text{隣合わせ})&=\frac{4}{6}=\frac{2}{3}\\ Pr(\text{向かい合わせ})&=\frac{2}{6}=\frac{1}{3} \end{aligned}\]これを踏まえると、データの期待値は以下のようになる:
グループ | 観測された隣り合わせに座る組(期待値) | 観測された向かい合って座る組(期待値) |
---|---|---|
共同行動 | 90組(90組) | 45組(45組) |
個別行動 | 2組(12組) | 16組(6組) |
計 | 92組(102組) | 61組(51組) |
したがって、観測されたデータと無作為に席を選ぶ仮説に基づく座り方の期待値はかなり近く、共同行動の学生ペアが隣り合わせの座り方を好むという推論はデータからは得られないと言える。一方、個別行動の学生たちは、無作為に席を選ぶ仮説に基づく座り方の期待値とは異なるデータが観測されたので、他の人と隣り合わせに座ることは好まないという推論は認められる余地がある。
注意点として、データの中での割合が、無作為と仮定した下で期待される割合と一致していても、その無作為性を立証することにはならない。
ポーカーの手札の確率
ポーカーを考えます。5枚のカードの組合せ全体を\(\Omega\)とおきます。
- 同じカードが2枚以上ある組み合わせを \(A\)
- 同じカードが3枚以上ある組み合わせを \(B\)
- 同じカードが4枚ある組み合わせを \(C\)
- 同じカードが2枚以上あるのが2種類ある組み合わせを\(D\)
- フルハウスになる組合せを \(E\)
とおきます。これら集合の包含関係をまず調べます。
同じカードが3枚以上あることは必然的に同じカードが2枚以上あるので,
\[C \subset B \subset A\]同じカードが2枚以上あるのが2種類ある組合せも、同じカードが2枚以上あることを意味しているので、
\[E \subset D\subset A\]かつ
\[E\subset B\]すべてのカードの数値が異なる確率
すべてのカードの数値が異なる場合は \(A^c\)と表せる。標本点の個数は数値13種類から5つ選び,それぞれのスートを4種類から1つ選べばいいので
\[\mid A^c\mid = _{13}C_5 \times 4^5 = 1317888\]したがって、確率は約 50.7%
ツー・ペアの確率
ツーペアになるのは\(D\cap E^c\)と表せる。数値13種類から2つ選び、それぞれのスートを\(_4C_2\)から選んだあとに、最初のに種類の数値と異なるカード\(52 - 8 = 48\)種類から1枚選べばいいので
\[|D\cap E^c| = _{13}C_2\cdot _4C_2 \cdot _4C_2 \cdot 48 = 123552\]従って、
\[P(D\cap E^c) = \frac{123552}{2598960} \approx 4.75 \%\]スリーカーズの確率
\((B \cap C^c) \cap E^c\)と表せる。13種類の数値から1種類、スートを4種類から3つ、残りのカードを48通りと44通りから選び、4枚目以降(残り2枚)のカードの順序は無視していいので
\[|(B \cap C^c) \cap E^c| = 13 \times _4C_3 \times 48 \times 44 / 2! = 54912\]従って、約2.11%
フォーカーズの確率
\(C\)は、13種類の数値から1種類、スートを4種類から4つ、残りのカードを48通りから選べばいいので
\[|C| = 13 \times _4C_4 \times 48 = 624\]従って、約0.02%
フルハウスの確率
まず数値を13種類から3枚の数値と2枚の数値の2つ選びます。そこから、それぞれのスートを種類を計算すればいいので
\[|E| = 13\times 12 \times _4C_3 \times _4C_2 = 3744\]従って、約0.144%
ワン・ペアの確率
仮に2が2枚でワンペアになったとすると、
- 2のスートの選び方: \(_4C_2\)
- 残りのカードの選びかた: 52枚から2の4枚を抜いた中から3枚かつ異なる数のカード選ぶので\(48\times 44 \times 40\)
- 残りのカードの順番:3枚目以降のカードの順序は無視していいので,\(3!\)で割らなければいけない
従って、
\[13\times _4C_2 \times 48\times 44 \times 40 / 3! = 1098240\]52枚から5枚選ぶ場合の数は\(_{52}C_5 = 2598960\)より、約42.2%
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ロイヤル・フラッシュの確率
ロイヤル・フラッシュとは,同じカードの種類(クラブ,スペード,ダイヤ,ハート)のエース,キング,クイーン,ジャック,10の組み合わせだから4通りのみです。
ストレート・フラッシュ
同じ種類のカードが順に並んでいる組み合わせです。ただし,ロイヤル・フラッシュは別とします。ストレートというのは1以上から始まって13以下で終わるもので,13から1へとは続けてはいけません。よって、36通り.
フラッシュ
5枚のカードが全部同じ種類の組み合わせ。ただし,ロイヤルフラッシュとストレートフラッシュの場合は除きます。まずスートを4種類から1つ選びます。数値は13種類から5種類えらびます。
\[\text{広義フラッシュの標本点の数} = 4\times _{13}C_5\]ここからロイヤルフラッシュとストレートフラッシュを覗くので
\[4\times _{13}C_5 - 40 = 5108\text{ 通り}\]従って、約0.196%
ストレート
種類に関係なく,5枚のカードが順に続いている組み合わせのうち,ストレートフラッシュとロイヤルフラッシュの場合を除いたもの。ストレートのスタート地点は1~10までの10種類のいずれかでスートは4種類のうちなんでもいいので
\[10 \times 4^5 - 40 = 10200\text{ 通り}\]従って、約0.392%
確認問題リスト
問題 1.1
3つのボール a, b, cを3つの箱の中に分配するという実験を考える。標本点は全部で何通りあるか?
解
a, b, cと区別のあるボールについて、それぞれがどの箱に入るかは3通りずつ存在する.
\[\therefore \: 3^3 = 27\text{ 通り}\]■
問題 1.2
区別のない3つのボールを3つの箱の中に分配するという実験を考える。標本点は全部で何通りあるか?
解
3つの箱をそれぞれ\(x, y, z\)とおくと、問題は次のように変形できる:
\[x + y + z = 3 \text{ s.t. } x\geq 0, y\geq 0, z\geq 0\]したがって、
\[_3H_3 = _5C_3 = \frac{5\times 4\times 3}{3\times 2\times 1} = 10\text{ 通り}\]■
問題1.3
区別のある3つのボール, a, b, c, を3つの箱の中に分配するという実験を考える。以下の事象に属する標本点は全部で何通りあるか?
- (1) 第2の箱は空である
- (2) ボールaは第一の箱に入っている
- (3) ボールbはボールcの入っている箱に入っていない
解 (1)
a, b, cと区別のあるボールについて、それぞれがどの箱に入るかは2通りずつ存在する.
\[\therefore \: 2^3 = 8\text{ 通り}\]解 (2)
a, b, cと区別のあるボールについて、b, cがどの箱に入るかは3通りずつ存在する.
\[\therefore \: 3^2 = 9\text{ 通り}\]解 (2)
a, b, cと区別のあるボールについて、a, bがどの箱に入るかは3通りずつ存在し、cは2通り.
\[\therefore \: 3^2\times 2 = 18\text{ 通り}\]■
問題 1.4
区別のない3つのボールを3つの箱の中に分配するという実験を考える。以下の事象に属する標本点は全部で何通りあるか?
- 第2の箱は空である
- 第1の箱にはボールが1つ入っている
- 第1の箱にはボールが1つ以上入っている
- 第1の箱と第2の箱は空ではない
解(1)
3つの箱をそれぞれ\(x, y, z\)とおくと、問題は次のように変形できる:
\[x + y + z = 3 \text{ s.t. } x\geq 0, y= 0, z\geq 0\]したがって、
\[_2H_3 = _4C_3 = \frac{4\times 3\times 2}{3\times 2\times 1} = 4\text{ 通り}\]解(2)
問題は次のように変形できる:
\[x + y + z = 3 \text{ s.t. } x=1 , y\geq 0, z\geq 0\]したがって、
\[_2H_2 = _3C_2 = \frac{3\times 2}{2\times 1} = 3\text{ 通り}\]解(3)
問題は次のように変形できる:
\[x + y + z = 3 \text{ s.t. } x\geq 1 , y\geq 0, z\geq 0\]Then,
\[x + y + z = 2 \text{ s.t. } x\geq 0 , y\geq 0, z\geq 0\]したがって、
\[_3H_2 = _4C_2 = \frac{4\times 3}{2\times 1} = 6\text{ 通り}\]解(4)
問題は次のように変形できる:
\[x + y + z = 3 \text{ s.t. } x\geq 1 , y\geq 1, z\geq 0\]Then,
\[x + y + z = 1 \text{ s.t. } x\geq 0 , y\geq 0, z\geq 0\]したがって、
\[_3H_1 = _3C_1 = 3\text{ 通り}\]■
問題 1.5
A, B, Cを事象とする。次の事象を式で表わせ
(1) Aだけが起きる
(2) A, B, Cのうち少なくとも2つが起きる
(3) どれも起きない
(4) 2つ以上は起きない
(5) 全部が起きるか、どれも起きないかのいずれかである
\[A - (B \cup C) = A \cap (B \cup C)^c = A A \cap B^c \cap C^c\]解(1)
\[(A\cap B)\cup (B\cap C)\cup (A\cap C)\]解(2)
\[(A\cup B \cup C)^c = A^c\cap B^c\cap C^c\]解(3)
解(4)
2つ以上起きない事象は, Aだけ起きる, Bだけ起きる,Cだけ起きる,いずれも起きない,のいずれかである。従って、
\[\begin{aligned} &(A - (B\cup C)) \cup(B - (A\cup C))\cup (C - (A\cup B)) \cup (A^c \cap B^c \cap C^c))\\ & = (A \cap B^c \cap C^c) \cup(A^c \cap B \cap C^c)\cup (A^c \cap B^c \cap C) \cup (A^c \cap B^c \cap C^c)) \end{aligned}\]\[(A \cap B \cap C) \cup ((A^c \cap B^c \cap C^c))\]解(5)
■
問題 1.6
次の式を簡単にせよ.
(1) \((A\cup B) \cap (A\cup B^c)\)
(2) \((A\cup B) \cap (A^c\cup B) \cap (A\cup B^c)\)
解(1)
分配法則より
\[\begin{aligned} (A\cup B) \cap (A\cup B^c) &= ((A\cup B)\cap A) \cup ((A\cup B) \cap B^c)\\ &= A \cup (A\cap B^c)\\ &= A \end{aligned}\]解(2)
上記解答を用いて
\[\begin{aligned} (A\cup B) \cap (A^c\cup B) \cap (A\cup B^c) \cap (A\cup B)& = ((A\cup B) \cap (A^c\cup B)) \cap ((A\cup B^c) \cap (A\cup B))\\ &= A\cap B \end{aligned}\]■
問題 1.7
\(X\)を非負の整数上で確率をもつ離散型確率変数とし、非負の整数 \(k\) に対して
\[F(k) = P(X \leq k)\]とします. \(X\)の期待値が存在するとき、次の等式が成り立つことを示せ
\[E[X] = \sum^{\infty}_{k=0}\{1 - F(k)\}\]解答
\(k = \sum^{k-1}_{0} 1\)を用いて,
\[\begin{aligned} E[X] &= \sum^\infty{k = 0} k f(k)\\ &= \sum^\infty{k = 1} k f(k)\\ &= \sum^\infty_{k = 1}\sum^{k-1}_{i=0} f(k) \end{aligned}\]このとき、
\[\{(k, i)\mid k\in [1, \infty), i \in [0, k-1]\} = \{(k, i)\mid k\in [i + 1, \infty), i \in [0, \infty]\}\]なので
\[\begin{aligned} E[X &=\sum^\infty{k = 1}\sum^{k-1}_{i=0} f(k)\\ &= \sum^\infty_{i = 0}\sum^{\infty}_{k=i+1} f(k)\\ &= \sum^\infty_{i = 0} [1 - F(i)] \end{aligned}\]■
(注意:GitHub Accountが必要となります)