数理モデルの作り方

方法論
Author

Ryo Nakagami

Published

2025-01-28

モデリングのステップ

モデリングとは,現実の事象を説明するために実施するプロセスです.モデリングを通じて,これまで未知であった自然現象を解明したり,または解明を通じて将来の予測や,モデルに基づく意思決定を行ったりします.

モデリングの流れとしては,

  • 単純化した仮定をたくさん立てる
  • 重要な変数が何であるのか明らかにする
  • 変数間の関係性について何かしらの仮定を考える

これらのステップを行いながら,現実の問題を数理モデルの問題に置き換えます.その後,適切な手法を用いて,モデルを解きます.解が出てきたならば,

  • その解を現実の問題の文脈に翻訳し解釈
  • モデルの解が現実のデータと一致しているかの妥当性検証

を行いモデルを評価します.もしモデルの妥当性に疑念が認められたならば,仮定や変数の見直しなど定式化をやり直します.もしモデルが現実の事象に対して良い適合を示していたならば,意思決定目的関数に従ってモデル予測に基づく決定を行います.この一連の流れを表したのが (Figure 1) となります.

flowchart BT
    problem_setup["1: 解きたい現象の選択"]
    assumption["2: 仮説 & 仮定立案"]
    define_objective["3: 数理問題のモデル定式化"]
    solve["4: 数理問題を解く"]
    analysis["5: 解の意味を解釈する"]
    validation["6: モデル妥当性検証"]
    decision["7: モデルを用いた意思決定"]
    

    subgraph problem-framing-phase["**phase 1: モデル定式化**"]
        direction TB
        problem_setup --> assumption
        assumption --> define_objective
    end

    subgraph analysis-phase["**phase 2: モデルを解く**"]
        direction LR
        solve --> analysis
        analysis --> validation
    end

    subgraph decision-phase["**phase 3: 意思決定**"]
        decision
    end

    analysis-phase --仮定/変数/モデル<br>の見直し--> problem-framing-phase
    problem-framing-phase ----> analysis-phase
    analysis-phase ----> decision-phase

Figure 1

注意点として,なにを解きたいか?・知りたいか?がすでに決定されている状況からモデリングへというステップに入ります.なにを解くべきか?は意思決定問題の定式化や文脈に依存します.「解くべきもの・解く価値のあるもの」の議論を実施した上で,モデリングという過程に入ることを意識することが重要です.