可算集合と濃度

集合論
Author

Ryo Nakagami

Published

2025-06-17

Modified

2025-07-14

可算集合と濃度

自然数の集合 \(\mathbb N\) と1対1に対応している集合は,\(\mathbb N\) と「同じ個数の元」を持つと考えても良いと思われますが,無限集合の場合は 「元をすべて数え上げるということはできない」.ここで登場するのが「濃度」という概念です.

1対1対応と濃度

Definition 1 1対1対応

集合 \(M\) から集合 \(N\) への写像 \(\varphi\) で,次の(1), (2) の性質を満たすものが存在するとき,\(M, N\) は1対1対応しているという

  1. \(a, a^\prime \in M\)\(a\neq a^\prime\) ならば \(\varphi(a)\neq \varphi(a^\prime)\)
  2. 任意の \(\tilde b \in N\) に対して,ある \(\tilde a\in M\) が存在して,\(\varphi(\tilde a) = \tilde b\)

Definition 2 濃度

\(M, N\) は1対1対応しているとき,\(M\)\(N\) は同じ濃度をもつという.

カントールの対関数の全単射性の証明より,自然数の対 \((m, n)\) 全体の作る集合は \(\mathbb N\) と1対1対応している = 同じ濃度であることがわかります.

これを一般的な定理に拡張すると,

  • \(M, N\) を可算集合とすると,直積集合 \(M\times N\) も可算集合である

ということになります.ただし,可算集合 \(A_i\) について \(\displaystyle\Pi_{i=1}^\infty A_i\) は可算集合とはなりません,

Definition 3 可算

自然数の集合 \(\mathbb N\) と同じ濃度を持つ集合を,可算集合と呼ぶ.この可算集合の濃度を \(\mathfrak{N}_0\) と表す.

Example 1 偶数と奇数の集合

偶数の自然数の全体の集合を \(\pmb{E}_0\) としたとき,写像 \(f: \mathbb N \to \pmb{E}_0\)

\[ f(n) = 2n \]

とすると,\(f\) は全単射になります.このとき,\(\pmb{E}_0 \subset \mathbb N\) であるが,

\[ |\pmb{E}_0| = |\mathbb N| \]

という有限集合ではありえない性質が成立します.

また,奇数の自然数の全体の集合を \(\pmb{E}_1\) としたとき,写像 \(g: \mathbb N \to \pmb{E}_1\)

\[ g(n) = 2(n - 1) + 1 \]

とすると,\(g\) も全単射となります.


Example 2 整数の集合と可算集合

整数の集合 \(\mathbb Z\) について,写像 \(\varphi: \mathbb N \to \mathbb Z\)

\[ \begin{align} \varphi(n) = \left\{\begin{array}{c} \frac{n}{2} & ( n \in \mathbb E_0 )\\ -\frac{n-1}{2} & ( n \in \mathbb E_1) \end{array}\right. \end{align} \]

とすると,\(\varphi\) は全単射になります.


可算集合の部分集合と無限集合

Theorem 1

\(M\) を可算集合とする,\(S\subset M\) が無限集合であるとすると,\(S\) は可算集合である

Proof

\(M\) は可算集合であるので,\(M\)

\[ M = \{a_1, a_2, a_3, \cdots, a_n, \cdots\} \]

と表すことができます.\(S\) の元で,この並び方の最初に現れるものを \(a_{i_1}\) とすると,

\[ S = \{a_{i_1}, a_{i_2}, a_{i_3}, \cdots, a_{i_n}, \cdots\} \]

となり,また,\(S\) は無限集合なのでこの系列が途中で止まることはありません.写像 \(f: \mathbb N\to S\)

\[ f(n) = a_{i_n} \]

とすると,\(f\) は1対1写像となるので,\(S\) は可算集合であることがわかります.

Example 3 素数集合と可算集合

素数が無限にあることは,背理法を用いると示しやすいです,素数が有限個しかないとして,その総数を \(n\) とすると素数全体の集合 \(\mathbb P\)

\[ \mathbb P = \{2, 3, 5, \cdots, p_n\} \]

このとき自然数 \(q\)

\[ q = 2 \cdot 3 \cdot \cdots p_n + 1 \]

\(q\) はどんな素数でも割り切れないものになってしまうので,素数となりますが,これは素数の総数 \(n\) という仮定と矛盾.つまり,素数は無限に存在します.

素数集合は

\[ \mathbb P \subset \mathbb N \]

であるので,素数集合は可算集合となります.


References