可算集合と濃度
自然数の集合 \(\mathbb N\) と1対1に対応している集合は,\(\mathbb N\) と「同じ個数の元」を持つと考えても良いと思われますが,無限集合の場合は 「元をすべて数え上げるということはできない」.ここで登場するのが「濃度」という概念です.
1対1対応と濃度
Definition 1 1対1対応
集合 \(M\) から集合 \(N\) への写像 \(\varphi\) で,次の(1), (2) の性質を満たすものが存在するとき,\(M, N\) は1対1対応しているという
- \(a, a^\prime \in M\) で \(a\neq a^\prime\) ならば \(\varphi(a)\neq \varphi(a^\prime)\)
- 任意の \(\tilde b \in N\) に対して,ある \(\tilde a\in M\) が存在して,\(\varphi(\tilde a) = \tilde b\)
Definition 2 濃度
\(M, N\) は1対1対応しているとき,\(M\) と \(N\) は同じ濃度をもつという.
カントールの対関数の全単射性の証明より,自然数の対 \((m, n)\) 全体の作る集合は \(\mathbb N\) と1対1対応している = 同じ濃度であることがわかります.
これを一般的な定理に拡張すると,
- \(M, N\) を可算集合とすると,直積集合 \(M\times N\) も可算集合である
ということになります.ただし,可算集合 \(A_i\) について \(\displaystyle\Pi_{i=1}^\infty A_i\) は可算集合とはなりません,
Definition 3 可算
自然数の集合 \(\mathbb N\) と同じ濃度を持つ集合を,可算集合と呼ぶ.この可算集合の濃度を \(\mathfrak{N}_0\) と表す.
Example 1 偶数と奇数の集合
偶数の自然数の全体の集合を \(\pmb{E}_0\) としたとき,写像 \(f: \mathbb N \to \pmb{E}_0\) を
\[ f(n) = 2n \]
とすると,\(f\) は全単射になります.このとき,\(\pmb{E}_0 \subset \mathbb N\) であるが,
\[ |\pmb{E}_0| = |\mathbb N| \]
という有限集合ではありえない性質が成立します.
また,奇数の自然数の全体の集合を \(\pmb{E}_1\) としたとき,写像 \(g: \mathbb N \to \pmb{E}_1\) を
\[ g(n) = 2(n - 1) + 1 \]
とすると,\(g\) も全単射となります.
Example 2 整数の集合と可算集合
整数の集合 \(\mathbb Z\) について,写像 \(\varphi: \mathbb N \to \mathbb Z\) を
\[ \begin{align} \varphi(n) = \left\{\begin{array}{c} \frac{n}{2} & ( n \in \mathbb E_0 )\\ -\frac{n-1}{2} & ( n \in \mathbb E_1) \end{array}\right. \end{align} \]
とすると,\(\varphi\) は全単射になります.
可算集合の部分集合と無限集合
Theorem 1
\(M\) を可算集合とする,\(S\subset M\) が無限集合であるとすると,\(S\) は可算集合である
Example 3 素数集合と可算集合
素数が無限にあることは,背理法を用いると示しやすいです,素数が有限個しかないとして,その総数を \(n\) とすると素数全体の集合 \(\mathbb P\) は
\[ \mathbb P = \{2, 3, 5, \cdots, p_n\} \]
このとき自然数 \(q\) を
\[ q = 2 \cdot 3 \cdot \cdots p_n + 1 \]
は \(q\) はどんな素数でも割り切れないものになってしまうので,素数となりますが,これは素数の総数 \(n\) という仮定と矛盾.つまり,素数は無限に存在します.
素数集合は
\[ \mathbb P \subset \mathbb N \]
であるので,素数集合は可算集合となります.