集合 \((0,1)^N\) の濃度

集合論
Author

Ryo Nakagami

Published

2025-07-05

Modified

2025-07-09

べき集合

Definition 1 べき集合

集合 \(M\) があたえられたとき,\(M\) の部分集合全体の作る集合を \(\mathfrak{B}(M)\) と表し,\(M\) のべき集合と呼ぶ.

\(M = \{1, 2\}\) のとき,\(M\)の部分集合全体の作る集合は

\[ \mathfrak{B}(M) = \{\emptyset, \{1\}, \{2\}, \{1,2\}\} \]

また,冪集合も集合なので,

\[ \begin{align*} \mathfrak{B}(\mathfrak{B}(M)) =& \{ \emptyset,\{\emptyset\}, \{\{1\}\}, \{\{2\}\}, \{\{1, 2\}\}, \\ & \{\emptyset, \{1\}\}, \{\emptyset, \{2\}\}, \{\emptyset, \{1,2\}\}, \{\{1\}, \{2\}\}, \{\{1\}, \{1,2\}\}, \{\{2\}, \{1,2\}\}, \\ & \{\emptyset, \{1\}, \{2\}\}, \{\emptyset, \{1\}, \{1,2\}\}, \{\emptyset, \{2\}, \{1,2\}\}, \{\{1\}, \{2\}, \{1,2\}\}\\ & \{\emptyset, \{1\}, \{2\}, \{1, 2\}\} \end{align*} \]

これらを元の個数の観点から見てみると

\[ \begin{align} |M| &= |\{1, 2\}| = 2\\ |\mathfrak{B}(M)| &= 2^2 = 4\\ |\mathfrak{B}(\mathfrak{B}(M))| &= 2^4 = 16 \end{align} \]

直積集合

Definition 2 直積集合

2つの有限集合 \(M, N\) が与えられたとき,\(a\in M, b\in N\) からなる対 \((a, b)\) を考える.このような1つ1つの対を元と考え,この全体を1つの集合と考えたものを \(M\)\(N\) の直積集合といい

\[ M\times N \]

と表す

Theorem 1 直積集合の濃度

集合 \(M\), \(N\) を有限集合とする.このとき,

\[ |M\times N| = |M| \times |N| \]

Proof

証明は直積集合の濃度を参照してください.

集合 \(M^N\)

有限集合 \(M,N\) が与えられたとき,

\[ M^N \]

という集合を考えることができます.この集合は,\(N\) の元の個数だけ,\(M\) を直積させたものとして定義します.つまり, \(N = \{b_1, \cdots, b_n\}\) であるならば,

\[ M^N = \underbrace{M\times \cdots \times M}_{n個} \]

また,濃度についても以下のように計算ができます

\[ |M^N| = \underbrace{|M|\times \cdots \times |M|}_{n個} = m^n \]

\(M\) から \(N\) への写像全体の作る集合

Definition 3 写像

\(M, N\) を有限集合とします.\(M\) の各元から,\(N\) の各元を対応させる仕方が与えられているとき, \(M\) から \(N\) の写像 \(\varphi\) が与えられたという.

写像 \(\varphi\) によって \(a\in M\)\(b\in N\) にうつされるとき

\[ b= \varphi(a) \]

とあらわす.

\(M = \{x, y, z\}\), \(N = \{0, 1\}\) のとき,MからNへの写像は以下のように \(2^3\) 個考えることができます.

Code
from itertools import product
import pandas as pd

# 集合の定義
M = ['x', 'y', 'z']
N = [0, 1]

# 写像の全列挙
mappings = list(product(N, repeat=len(M)))

# DataFrameに変換
df = pd.DataFrame(mappings, columns=M)
df.index = df.index + 1  # 1始まりにする

# 表示
df
x y z
1 0 0 0
2 0 0 1
3 0 1 0
4 0 1 1
5 1 0 0
6 1 0 1
7 1 1 0
8 1 1 1

Definition 4 写像全体の集合

有限集合 \(M\) から 有限集合 \(N\) への写像の1つ1つを元と考えて,その全体を1つのまとまった集合と考えたものを

\[ \operatorname{Map}(M, N) \]

と表す.

Theorem 2 \[ |\operatorname{Map}(M, N)| = |N^M| \]

Proof

\(M = \{a_1, \cdots, a_m\}, N = \{b_1, \cdots, b_n\}\) とする.\(\varphi\)\(\operatorname{Map}(M, N)\) の元とする.\(\varphi\) がきまるということは \(M\) の元の移り先が決まっていること,つまり

\[ (\varphi(a_1), \varphi(a_2), \cdots, \varphi(a_m)) \]

によって決まる.\(i=1, 2, \cdots, m\) について \(\varphi(a_i) \in N\) であるので

\[ (\varphi(a_1), \varphi(a_2), \cdots, \varphi(a_m)) \in N\times N\times \cdots \times N = N^M \]

逆に \(N^M\) の元 \((b_{i_1}, b_{i_2}, \cdots, b_{i_m})\) があたえられると

\[ \varphi(a_k) = b_{i_k} \]

で,\(M \to N\) の写像が定まる.従って,\(\operatorname{Map}(M, N)\) の元 \(\varphi\)\(N^M\) の元が1対1対応している.従って,

\[ |\operatorname{Map}(M, N)| = |N^M| \]

べき集合との関係

有限集合 \(M\) に対して,その部分集合 \(S\) を1つとるということは \(x\in M\) に対して

  • 「含める」か「含めない」かをきめる
  • 「含めるを1」「含めないを0」とするならば写像 \(\varphi: M\to \{0, 1\}\) を1つ決めることと同じ

であるので \(M\) から \(\{0, 1\}\) への写像 \(\varphi\) を1つ決めることと1対1対応します. 従って,\(\mathfrak{B}(M)\) の元と,\(\operatorname{Map}(M, \{0, 1\})\) が1対1に対応することから.\(m = |M|\) とすると

\[ |\operatorname{Map}(M, \{0, 1\})| = |\mathfrak{B}(M)| = 2^m \]

Example 1

\(M = \{a, b, c\}\) とするとそのすべての部分集合と対応する写像は

部分集合 \(S\) 写像 \(\varphi: M \to \{0,1\}\)
\(\emptyset\) \(\varphi(a)=0, \varphi(b)=0, \varphi(c)=0\)
\(\{a\}\) \(\varphi(a)=1, \varphi(b)=0, \varphi(c)=0\)
\(\{b\}\) \(\varphi(a)=0, \varphi(b)=1, \varphi(c)=0\)
\(\{c\}\) \(\varphi(a)=0, \varphi(b)=0, \varphi(c)=1\)
\(\{a, b\}\) \(\varphi(a)=1, \varphi(b)=1, \varphi(c)=0\)
\(\{a, c\}\) \(\varphi(a)=1, \varphi(b)=0, \varphi(c)=1\)
\(\{b, c\}\) \(\varphi(a)=0, \varphi(b)=1, \varphi(c)=1\)
\(\{a, b, c\}\) \(\varphi(a)=1, \varphi(b)=1, \varphi(c)=1\)

無限集合と高々加算集合の直和

Definition 5 高々加算集合

集合 \(M\) が,有限集合か,加算集合のとき,\(M\) を高々加算集合という

\(M\) を加算集合として,\(S\subset M\) となるような無限集合を考えます.\(M\) は加算集合であるので

\[ M = \{a_1, a_2, \cdots, a_n, \cdots\} \]

と集合を \(\mathbb N\) と対応させて表現することができます.次に,\(S\) の元について,\(M\) の元の並び方のうち最初に \(S\) の元として現れるものを \(a_{i_1}\), 次は \(a_{i_2}, \cdots\) とすると

\[ S = \{a_{i_1}, a_{i_2}, \cdots\} \]

となります.\(S\) は定義より無限集合であり,また写像 \(\varphi: \mathbb N\to S\)

\[ \varphi(n) = a_{i_n} \]

とすると,\(\varphi\) は1対1写像となります.従って,\(S\) は加算集合となります.つまり,\(M\) を加算集合とすると,\(M\) の任意の部分集合は高々加算集合ということになります.

Theorem 3

\(M\) を無限集合,\(A\) を高々加算集合とする.このとき,\(M\)\(M\sqcup A\) の間には1対1の対応があり,そのため,2つの濃度は等しい:

\[ |M| = |M \sqcup A| \]

Proof

\(M\) から1つの元 \(b_1\) をとると,\(M - \{b_1\}\) は空襲号ではないので,同じ操作を繰り返すことができます.また,\(M\) は無限集合であるので,無限回繰り返して,その結果得られた \(b_i\) を以下のような集合で表現する

\[ B = \{b_1, b_2, \cdots, b_n, \cdots \} \]

このとき,\(B\subset M\) かつ \(B\) は加算集合です.加算集合と加算集合の和は加算集合なので \(B\sqcup A\) も加算集合となります.従って,\(B\)\(B\sqcup A\) はある写像 \(\varphi\) によって1対1に対応します.

次に

\[ \tilde\varphi: (M-B) \sqcup B\to (M-B)\sqcup (B\sqcup A) \]

を考えます.

  • \(x\in M -B\) ならば \(\tilde\varphi(x) = x\)
  • \(x\in B\) ならば \(\tilde\varphi(x) = \varphi(x)\)

とすると,\(\tilde\varphi\) も1対1写像となります.

\[ \begin{align} M-B \sqcup B &= M\\ (M-B)\sqcup (B\sqcup A) &= M \sqcup A \end{align} \]

であることから

\[ |M| = |M| + |A| \]

\(\mathfrak{B}(\mathbb N)\) の濃度

これまでは有限集合を前提に話してきましたが,ここからは自然数集合 \(\mathbb N\) という加算無限集合を取り扱います.

\[ |\mathbb N| = \aleph_0 \]

であることに留意すると,

\[ |\mathfrak{B}(\mathbb N)| = 2^{\aleph_0} \]

これがどれくらいの濃度を持つのか考えてみます.

Theorem 4 \[ 2^{\aleph_0} = \aleph \]

Proof

濃度 \(2\) を持つ集合として \(\{0, 1\}\) を考えます.このとき,\(2^{\aleph_0}\) は,直積集合

\[ P = \{0, 1\}\times \{0, 1\}\times \{0, 1\}\times \cdots \]

の濃度と等しくなります.\(\aleph\) が実数集合の濃度と等しいので,\(|(0, 1]|= \aleph\) であることから

\[ |P| = |(0, 1]| \]

を示せれば良いとなります.

\(P\) の元は 0と1 からなる数列として,\((a_1, a_2, \cdots)\) と表せるので,これを2進小数で表現された実数と対応させることができます.つまり,

\[ 0.a_1a_2\cdots \]

\((0, 1]\) に属する実数を無限2進小数で表現すると,その表し方はただ1通りとなります.

次に,\((0, 1]\) に属する実数について,有限2進小数に表せる集合 \(S\) を考えてみます.このとき,\(S \subset \mathbb Q\) であることから

\[ |S| = \aleph_0 \]

次に,写像 \(\varphi: P\to (0, 1] \sqcup S\) を考えてみます.\(x\in P\) について,

\[ x = (a_1, \cdots, a_n, 0, 0, \cdots) \]

とあるところから先すべてが0になっているものについて,

\[ \varphi(x) = 0.a_1a_2\cdots a_n \in S \]

と対応させます.また,それ以外の場合は

\[ \varphi(x) = 0.a_1a_2\cdots a_n\cdots \in (0, 1] \]

となるので,\(x\in P \Rightarrow \varphi(x) \in ((0, 1] \sqcup S)\),また \(\varphi\)\(P\) から \((0, 1] \sqcup S\) に対して1対1の対応を与えてます.つまり,

\[ |P| = |(0, 1] \sqcup S| \]

また無限集合 Aと高々加算集合 B について Theorem 3 より

\[ |A| = |A\sqcup B| \]

であることから

\[ |P| = |(0, 1] \sqcup S| = |(0, 1]| \]

従って,

\[ 2^{\aleph_0} = \aleph \]