べき集合
Definition 1 べき集合
集合 \(M\) があたえられたとき,\(M\) の部分集合全体の作る集合を \(\mathfrak{B}(M)\) と表し,\(M\) のべき集合と呼ぶ.
\(M = \{1, 2\}\) のとき,\(M\)の部分集合全体の作る集合は
\[
\mathfrak{B}(M) = \{\emptyset, \{1\}, \{2\}, \{1,2\}\}
\]
また,冪集合も集合なので,
\[
\begin{align*}
\mathfrak{B}(\mathfrak{B}(M)) =& \{
\emptyset,\{\emptyset\}, \{\{1\}\}, \{\{2\}\}, \{\{1, 2\}\}, \\
& \{\emptyset, \{1\}\}, \{\emptyset, \{2\}\}, \{\emptyset, \{1,2\}\}, \{\{1\}, \{2\}\}, \{\{1\}, \{1,2\}\}, \{\{2\}, \{1,2\}\}, \\
& \{\emptyset, \{1\}, \{2\}\}, \{\emptyset, \{1\}, \{1,2\}\}, \{\emptyset, \{2\}, \{1,2\}\}, \{\{1\}, \{2\}, \{1,2\}\}\\
& \{\emptyset, \{1\}, \{2\}, \{1, 2\}\}
\end{align*}
\]
これらを元の個数の観点から見てみると
\[
\begin{align}
|M| &= |\{1, 2\}| = 2\\
|\mathfrak{B}(M)| &= 2^2 = 4\\
|\mathfrak{B}(\mathfrak{B}(M))| &= 2^4 = 16
\end{align}
\]
直積集合
Definition 2 直積集合
2つの有限集合 \(M, N\) が与えられたとき,\(a\in M, b\in N\) からなる対 \((a, b)\) を考える.このような1つ1つの対を元と考え,この全体を1つの集合と考えたものを \(M\) と \(N\) の直積集合といい
\[
M\times N
\]
と表す
Theorem 1 直積集合の濃度
集合 \(M\), \(N\) を有限集合とする.このとき,
\[
|M\times N| = |M| \times |N|
\]
集合 \(M^N\)
有限集合 \(M,N\) が与えられたとき,
\[
M^N
\]
という集合を考えることができます.この集合は,\(N\) の元の個数だけ,\(M\) を直積させたものとして定義します.つまり, \(N = \{b_1, \cdots, b_n\}\) であるならば,
\[
M^N = \underbrace{M\times \cdots \times M}_{n個}
\]
また,濃度についても以下のように計算ができます
\[
|M^N| = \underbrace{|M|\times \cdots \times |M|}_{n個} = m^n
\]
\(M\) から \(N\) への写像全体の作る集合
Definition 3 写像
\(M, N\) を有限集合とします.\(M\) の各元から,\(N\) の各元を対応させる仕方が与えられているとき, \(M\) から \(N\) の写像 \(\varphi\) が与えられたという.
写像 \(\varphi\) によって \(a\in M\) が \(b\in N\) にうつされるとき
\[
b= \varphi(a)
\]
とあらわす.
\(M = \{x, y, z\}\), \(N = \{0, 1\}\) のとき,MからNへの写像は以下のように \(2^3\) 個考えることができます.
Code
from itertools import product
import pandas as pd
# 集合の定義
M = ['x', 'y', 'z']
N = [0, 1]
# 写像の全列挙
mappings = list(product(N, repeat=len(M)))
# DataFrameに変換
df = pd.DataFrame(mappings, columns=M)
df.index = df.index + 1 # 1始まりにする
# 表示
df
1 |
0 |
0 |
0 |
2 |
0 |
0 |
1 |
3 |
0 |
1 |
0 |
4 |
0 |
1 |
1 |
5 |
1 |
0 |
0 |
6 |
1 |
0 |
1 |
7 |
1 |
1 |
0 |
8 |
1 |
1 |
1 |
Definition 4 写像全体の集合
有限集合 \(M\) から 有限集合 \(N\) への写像の1つ1つを元と考えて,その全体を1つのまとまった集合と考えたものを
\[
\operatorname{Map}(M, N)
\]
と表す.
Theorem 2 \[
|\operatorname{Map}(M, N)| = |N^M|
\]
\(M = \{a_1, \cdots, a_m\}, N = \{b_1, \cdots, b_n\}\) とする.\(\varphi\) を \(\operatorname{Map}(M, N)\) の元とする.\(\varphi\) がきまるということは \(M\) の元の移り先が決まっていること,つまり
\[
(\varphi(a_1), \varphi(a_2), \cdots, \varphi(a_m))
\]
によって決まる.\(i=1, 2, \cdots, m\) について \(\varphi(a_i) \in N\) であるので
\[
(\varphi(a_1), \varphi(a_2), \cdots, \varphi(a_m)) \in N\times N\times \cdots \times N = N^M
\]
逆に \(N^M\) の元 \((b_{i_1}, b_{i_2}, \cdots, b_{i_m})\) があたえられると
\[
\varphi(a_k) = b_{i_k}
\]
で,\(M \to N\) の写像が定まる.従って,\(\operatorname{Map}(M, N)\) の元 \(\varphi\) と \(N^M\) の元が1対1対応している.従って,
\[
|\operatorname{Map}(M, N)| = |N^M|
\]
べき集合との関係
有限集合 \(M\) に対して,その部分集合 \(S\) を1つとるということは \(x\in M\) に対して
- 「含める」か「含めない」かをきめる
- 「含めるを1」「含めないを0」とするならば写像 \(\varphi: M\to \{0, 1\}\) を1つ決めることと同じ
であるので \(M\) から \(\{0, 1\}\) への写像 \(\varphi\) を1つ決めることと1対1対応します. 従って,\(\mathfrak{B}(M)\) の元と,\(\operatorname{Map}(M, \{0, 1\})\) が1対1に対応することから.\(m = |M|\) とすると
\[
|\operatorname{Map}(M, \{0, 1\})| = |\mathfrak{B}(M)| = 2^m
\]
Example 1
\(M = \{a, b, c\}\) とするとそのすべての部分集合と対応する写像は
\(\emptyset\) |
\(\varphi(a)=0, \varphi(b)=0, \varphi(c)=0\) |
\(\{a\}\) |
\(\varphi(a)=1, \varphi(b)=0, \varphi(c)=0\) |
\(\{b\}\) |
\(\varphi(a)=0, \varphi(b)=1, \varphi(c)=0\) |
\(\{c\}\) |
\(\varphi(a)=0, \varphi(b)=0, \varphi(c)=1\) |
\(\{a, b\}\) |
\(\varphi(a)=1, \varphi(b)=1, \varphi(c)=0\) |
\(\{a, c\}\) |
\(\varphi(a)=1, \varphi(b)=0, \varphi(c)=1\) |
\(\{b, c\}\) |
\(\varphi(a)=0, \varphi(b)=1, \varphi(c)=1\) |
\(\{a, b, c\}\) |
\(\varphi(a)=1, \varphi(b)=1, \varphi(c)=1\) |
無限集合と高々加算集合の直和
Definition 5 高々加算集合
集合 \(M\) が,有限集合か,加算集合のとき,\(M\) を高々加算集合という
\(M\) を加算集合として,\(S\subset M\) となるような無限集合を考えます.\(M\) は加算集合であるので
\[
M = \{a_1, a_2, \cdots, a_n, \cdots\}
\]
と集合を \(\mathbb N\) と対応させて表現することができます.次に,\(S\) の元について,\(M\) の元の並び方のうち最初に \(S\) の元として現れるものを \(a_{i_1}\), 次は \(a_{i_2}, \cdots\) とすると
\[
S = \{a_{i_1}, a_{i_2}, \cdots\}
\]
となります.\(S\) は定義より無限集合であり,また写像 \(\varphi: \mathbb N\to S\) を
\[
\varphi(n) = a_{i_n}
\]
とすると,\(\varphi\) は1対1写像となります.従って,\(S\) は加算集合となります.つまり,\(M\) を加算集合とすると,\(M\) の任意の部分集合は高々加算集合ということになります.
Theorem 3
\(M\) を無限集合,\(A\) を高々加算集合とする.このとき,\(M\) と \(M\sqcup A\) の間には1対1の対応があり,そのため,2つの濃度は等しい:
\[
|M| = |M \sqcup A|
\]
\(M\) から1つの元 \(b_1\) をとると,\(M - \{b_1\}\) は空襲号ではないので,同じ操作を繰り返すことができます.また,\(M\) は無限集合であるので,無限回繰り返して,その結果得られた \(b_i\) を以下のような集合で表現する
\[
B = \{b_1, b_2, \cdots, b_n, \cdots \}
\]
このとき,\(B\subset M\) かつ \(B\) は加算集合です.加算集合と加算集合の和は加算集合なので \(B\sqcup A\) も加算集合となります.従って,\(B\) と \(B\sqcup A\) はある写像 \(\varphi\) によって1対1に対応します.
次に
\[
\tilde\varphi: (M-B) \sqcup B\to (M-B)\sqcup (B\sqcup A)
\]
を考えます.
- \(x\in M -B\) ならば \(\tilde\varphi(x) = x\)
- \(x\in B\) ならば \(\tilde\varphi(x) = \varphi(x)\)
とすると,\(\tilde\varphi\) も1対1写像となります.
\[
\begin{align}
M-B \sqcup B &= M\\
(M-B)\sqcup (B\sqcup A) &= M \sqcup A
\end{align}
\]
であることから
\[
|M| = |M| + |A|
\]
\(\mathfrak{B}(\mathbb N)\) の濃度
これまでは有限集合を前提に話してきましたが,ここからは自然数集合 \(\mathbb N\) という加算無限集合を取り扱います.
\[
|\mathbb N| = \aleph_0
\]
であることに留意すると,
\[
|\mathfrak{B}(\mathbb N)| = 2^{\aleph_0}
\]
これがどれくらいの濃度を持つのか考えてみます.
Theorem 4 \[
2^{\aleph_0} = \aleph
\]
濃度 \(2\) を持つ集合として \(\{0, 1\}\) を考えます.このとき,\(2^{\aleph_0}\) は,直積集合
\[
P = \{0, 1\}\times \{0, 1\}\times \{0, 1\}\times \cdots
\]
の濃度と等しくなります.\(\aleph\) が実数集合の濃度と等しいので,\(|(0, 1]|= \aleph\) であることから
\[
|P| = |(0, 1]|
\]
を示せれば良いとなります.
\(P\) の元は 0と1 からなる数列として,\((a_1, a_2, \cdots)\) と表せるので,これを2進小数で表現された実数と対応させることができます.つまり,
\[
0.a_1a_2\cdots
\]
\((0, 1]\) に属する実数を無限2進小数で表現すると,その表し方はただ1通りとなります.
次に,\((0, 1]\) に属する実数について,有限2進小数に表せる集合 \(S\) を考えてみます.このとき,\(S \subset \mathbb Q\) であることから
\[
|S| = \aleph_0
\]
次に,写像 \(\varphi: P\to (0, 1] \sqcup S\) を考えてみます.\(x\in P\) について,
\[
x = (a_1, \cdots, a_n, 0, 0, \cdots)
\]
とあるところから先すべてが0になっているものについて,
\[
\varphi(x) = 0.a_1a_2\cdots a_n \in S
\]
と対応させます.また,それ以外の場合は
\[
\varphi(x) = 0.a_1a_2\cdots a_n\cdots \in (0, 1]
\]
となるので,\(x\in P \Rightarrow \varphi(x) \in ((0, 1] \sqcup S)\),また \(\varphi\) は \(P\) から \((0, 1] \sqcup S\) に対して1対1の対応を与えてます.つまり,
\[
|P| = |(0, 1] \sqcup S|
\]
また無限集合 Aと高々加算集合 B について Theorem 3 より
\[
|A| = |A\sqcup B|
\]
であることから
\[
|P| = |(0, 1] \sqcup S| = |(0, 1]|
\]
従って,
\[
2^{\aleph_0} = \aleph
\]