✅ TL:DR
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- 可能であれば,今回の分析提案が既存の既存研究のどこに位置づくのかを示す
- 独自性がどこにあるかを過去の知識の積み重ねの中で示す
📘 Research Proposalとは?
Definition 1 Research Proposal
Research Proposalとは,分析におけるWhatとWhyとWhenとHowを明確に示す文書:
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| What | 研究アイデアやResearch Question,期待される成果物を明確かつ具体的に提示する |
| Why | 提示したResearch Questionがなぜ重要なのか?どのような価値をもたらすのか?分析のAim(目的)はなにか?を記載する |
| When | 分析スケジュールやタイムラインを明示する |
| How | 分析アプローチ,研究手法,必要なリソースや実現可能性について記載する |
Questionに対するAnswerはResearch Proposalには記載しません.記載できるということは,すでに答えが分かっている問いになってしまうので,解く価値がないResearch Questionになってしまいます.
分析の目的(Aim)の記述
Definition 2 Aim
Aimとは,研究が最終的に目指す目的を明確に述べるもの.例として以下,
- 既存の分析に存在するギャップに取り組むのか?
- ある理論を深く検証するのか,
- 何かを証明/反証しようとしているのか
- 研究が成功した場合に得られる成果を記述する
記述にあたって,焦点を絞った簡潔なステートメントであることが求められます.
分析アプローチとObjectives(目標)
Objectives(目標)とは,Aimを達成するための具体的なステップを示すものとここでは定義します.その上で,分析アプローチはObjectivesベースでまず言語化することを目指します.
- Aimと照らし合わせて,何をどのような順序で達成すべきなのかを整理する
- 各Objectiveに対して適切な手法や分析手順を対応させる
- データ収集や前処理,モデル構築・評価などの具体的タスクを明示する
- Objectiveの達成順序に従い,分析のフローやスケジュールを設計する
- 可能なリスクや実現可能性についても併せて検討する
分析方法の記述の観点
というポイントを抑えとくことが重要です.
Primary/Secondary Endpointsの事前定義
研究開始前にprimary endpoint(主要評価項目)とsecondary endpoint(副次評価項目)を明確に定義することが重要です.
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| Primary Endpoint | 研究の主目的に直接対応する最も重要な評価指標.仮説検証の中心となる |
| Secondary Endpoint | 主要評価項目を補完する追加的な評価指標.探索的な分析や副次的な効果の検証に用いる |
- バイアスの防止: 結果を見てから評価指標を選ぶと,都合の良い結果を「主要な発見」として報告するcherry-pickingが起こりうる
- 統計的妥当性の確保: 多重比較の問題を適切に扱うため,事前に検定の優先順位を決めておく必要がある
- 研究の透明性: 事前登録(pre-registration)により,研究の信頼性と再現性が向上する
Example 1 RCTにおける評価指標の例
RCTでは,処置群(Treatment)と対照群(Control)の平均値の差を用いて処置効果の有無を統計的に検定することが一般的です.
\[ \text{処置効果} = \bar{Y}_{\text{Treatment}} - \bar{Y}_{\text{Control}} \]
- Primary Endpoint: 新薬の臨床試験において,投与12週後の血圧低下量(mmHg)の群間差
- Secondary Endpoint: 副作用発生率,QOLスコアの変化,治療継続率など
帰無仮説 \(H_0: \mu_T - \mu_C = 0\)(処置効果なし)に対して,\(t\)検定やANCOVAなどを用いて統計的有意性を判定します.
分析リソースの記述
| カテゴリ | 内容例 |
|---|---|
| 1. データ関連 | - 利用可能なデータセット(一次データ or 二次データ) - データの量・質(サンプルサイズ,欠損の有無,信頼性) - データ取得方法(センサー,API,公開DB,実験・調査) |
| 2. 計算環境 | - 計算リソース(PC,GPU,クラウド環境) - 必要なストレージ容量 - ソフトウェア環境(Python, R, SQL, TensorFlow, PyTorchなど) |
| 3. 人的リソース | - 分析を行う研究者・データサイエンティスト - ドメイン知識を持つ専門家(例:HVACなら熱工学や設備の専門家) - コラボレーターや分析メンター |
| 4. 時間的リソース | - データ収集にかかる時間 - モデル開発・実験・検証に必要な期間 - 論文や報告書執筆のための期間 |
参考文献整理のすすめ
ビジネス提案書では参考文献を明示することは少ないかもしれないですが,社内内部的になぜこの提案に至ったのか?を上長へ説得するする際や引きスムーズな継ぎ時を実現するために整理することは有用です. クライアント向けに提示する際と合わせて,参考文献整理のメリットを以下で整理します
| ポイント | 内容 | 具体例・補足 |
|---|---|---|
| 1. 研究・分析の背景を示す | 過去の分析や公開データ,既存の手法・モデルに基づき,自分の分析の位置付けを示す | 「なぜこの問題を解く必要があるか」「既存研究では何が不十分か」を裏付ける |
| 2. 信頼性の担保 | データや手法の選定理由を文献に基づき説明することで,提案内容の説得力を増す | 評価者に「検討や調査に基づいている」と安心感を与える |
| 3. 方法論の妥当性を示す | 過去に用いられた分析手法やモデルの参考文献を挙げ,方法論の正当性を示す | 比較研究や改善の視点で,手法選定の根拠を示す |
| 4. 独自性・新規性の強調 | 既存分析との差分やギャップを示すことで,自分の分析の新規性・意義を明確にする | 研究の独自性や学問的貢献を評価者に伝える |