社内ネットワークのトラブル切り分け

network
troubleshooting
作者

Ryo Nakagami

公開

2026-10-26

更新日

2026-10-26

前提:ネットワーク構成

本社事業所のネットワーク構成
  • PCのIPアドレス・DNSサーバ等は手動設定(DHCPは不使用)
  • Web閲覧は必ずプロキシサーバ(DMZ,proxy.p.example.jp = x.y.z.103)を経由する
  • 社内の名前解決は DNSサーバ(172.16.0.101)が担う

プロキシ経由のWebアクセスの機序

プロキシ経由のWebアクセスにおける名前解決と通信の流れ
  1. PCが社内DNSサーバに proxy.p.example.jp を問い合わせ,x.y.z.103 を得る
  2. PCはプロキシにHTTPリクエストを送る.宛先はリクエストの中身(GET http://www.example.com/)としてプロキシに渡すだけで,PCは宛先のIPアドレスを知らない
  3. プロキシが宛先ホスト名 www.example.com を解決する
  4. プロキシが自分の名前でWebサーバに接続し,レスポンスを受け取る
  5. プロキシがレスポンスをPCに返す

PC自身が解決する必要があるのはプロキシのホスト名だけ.外部サイトの名前解決はプロキシ側の仕事.

この構成のメリット

メリット 理由
社内DNSが外部の名前を扱わなくてよい 社内DNSは社内の名前(proxy.p.example.jp など)を引ければ足りる.インターネットへ問い合わせる設定が要らないため,構成と運用が単純になる
FWのルールが少なく済む 社内LAN→インターネットの通信(HTTPもDNSも)を許可する必要がない.外へ出られるのはプロキシだけ,と絞れる
PCの通信が外部から見えない Webサーバから見える接続元はプロキシ(x.y.z.103)だけ.社内のアドレス(172.16.x.x)は外に出ない
外向き通信を1か所で管理できる アクセスログの取得,URLフィルタリング,キャッシュを,プロキシ1台に集めて実施できる
PCの設定が少ない PCに入れる設定は「社内DNSサーバ」と「プロキシのホスト名・ポート」だけでよい

Trouble 1: 自席からインターネットにアクセスできない

ノートポイント
  • Webアクセスで最初に通る相手はプロキシなので,まずプロキシのIPアドレスへ ping を打つ.
  • 原因が「到達性」と「名前解決・設定」のどちら側にあるか判別する

切り分けの手順と原因パターン
手順 確認内容 結果と次の一手
1. ping x.y.z.103 プロキシまでの到達性 OK → 到達性は正常なので手順2 / NG → 到達性の問題なので手順4
2. nslookup proxy.p.example.jp 名前解決 timeout:PCのDNSサーバ設定の誤り / NXDOMAIN:レコードの欠落,プロキシ名の誤記(①)/ OK → 手順3
3. ブラウザのプロキシ設定 使うプロキシの指定 プロキシの未設定,ホスト名・ポート番号の誤り(②).正しければ原因はプロキシより先
4. ping 172.16.N.254 自席〜自部ルータ NG → IPアドレス・サブネットマスクの誤り,ケーブル(③)/ OK → 手順5
5. ping 172.16.0.101 部ルータ〜基幹LAN NG → デフォルトゲートウェイの誤り,部ルータの経路(④)/ OK → FWの許可ルール,プロキシの停止(⑤)
  • 手順1がOKで手順2がtimeoutなら,DNSサーバへは届くはずなのに応答がない.原因はPC側のDNSサーバのアドレス設定にほぼ絞れる
  • 手順1〜3がすべてOKなら,原因はプロキシより先(プロキシ自身の名前解決,外向きのFW,外部サイト)にある
  • ping はFWがICMPを遮断していればNGになる.手順1がNGで手順5までOKのときは,プロキシのポートへのTCP接続(curl -x x.y.z.103:<port> ... など)でも確かめる

Trouble 2: 自席から所属部のFSにプロキシ経由でアクセスしてしまった

重要前提
  • FWは DMZ(プロキシサーバ)→ 社内LAN(FS)の通信を禁止している ものとする

プロキシ経由でFSにアクセスしたときの経路

何が起きたか

FSは自席PCと同じ部のLAN上にあり,本来は直接届く(図の経路③). ところがブラウザがプロキシ設定のままFSのURLを開くと,FS宛の通信もいったんプロキシへ送られる(経路②).

  1. PC → プロキシ:「FSのページを取ってきて」と依頼する
  2. プロキシ(DMZ)→ FS(社内LAN):プロキシがFSへ新しく接続しようとする
  3. FWが前提のルールによりこの接続を遮断する → FSにアクセスできない

なぜFWはDMZ→社内LANを遮断するのか

前提としたFWのルールを,通信の向きごとに整理すると次の通り.ルールは「誰が通信を始めてよいか」で決まる.

通信の向き(開始する側 → 相手) 可否 例
社内LAN → DMZ 許可 PC → プロキシ,PC → メールサーバ
DMZ → インターネット 許可 プロキシ → Webサーバ
インターネット → DMZ 必要なものだけ許可 外部 → メールサーバ(メール受信)
DMZ → 社内LAN 遮断 プロキシ → FS

応答パケット(PC→プロキシへの返事など)は,始めた側への返信として通る.遮断されるのは,DMZ側から新しく始める通信だけ.

遮断する意図は,DMZのサーバが乗っ取られたときに被害を社内へ広げないことにある.

  • DMZのサーバ(プロキシ・メールサーバ)はインターネットと直接やり取りするため,社内で最も攻撃を受けやすい
  • もしDMZ→社内LANを許可していると,乗っ取られたプロキシを踏み台にしてFSへ侵入され,業務データを抜き取られる
  • DMZ→社内LANを遮断しておけば,DMZが侵害されても被害をDMZの中に閉じ込められる

対処

  • ブラウザのプロキシ例外設定に社内の宛先(172.16.0.0/16,社内のホスト名)を加え,社内宛はプロキシを通さず直接アクセスさせる
  • 切り分けでは,まず ping でFSに届くか確かめる.届くのにブラウザからだけ開けないなら,原因はプロキシ設定と判断できる