正規分布の性質
Def: 正規分布
確率変数 が平均と分散 をもつ正規分布に従う,つまり のとき, の確率密度関数 は
について,標準化変換(standardization)
を行うと,変数変換の公式より
となります. のことを特に標準正規分布とよび,そのpdfを , CDFを で表します.
の形状から,location parameter を中心に対称であることが分かる.つまり, は で対称であり
がわかる.
▶ 範囲
という確率分布を考えたとき,シグマ範囲の目安として以下が知られてます
大体の目安として, 範囲はいわゆる「千三つ」であることは覚えといて損はないと思います.
と変数変換をすると
が示せれば良い.
とおくと,
ここで, と極座標変換を行う. ヤコビアン は
より
以上より, を得る.
Theorem 16.2
標準正規分布の確率密度関数を とするとき,
が成立する.
が偶関数, が奇関数より, は奇関数になる.従って,
2次モーメントについては
Theorem 16.3
確率変数 のとし, をその確率密度関数とする,このとき,
が成立する.
▶ location parameterについて
と変数変換をすると, より
▶ scale parameterについて
確率密度関数より
両辺について で微分すると
これを整理すると
これは
に相当する.
▶ Example 16.1 : 標準正規分布の4次モーメントの導出
の4次モーメントについて,ガンマ関数 を用いて以下のように計算できます.
ここで, という変数変換を行う.
▶ 標準正規分布のn次モーメントについて
標準正規分布について, が偶関数であることから, が奇数のときは
であることはすぐに分かります.一方, を自然数として, と表せるときは
と変数変換を行うと, より
であることに留意すると
になるので
またはこれを変形して,
と表すこともできます.
MGFと特性関数
Theorem 16.4 : 標準正規分布の積率母関数と特性関数
としたとき,積率母関数 及び,特性関数 は以下のようになる
特性関数は より とわかるが,以下のように計算することもできる.
次に, について を微分すると
このとき,
であるので
より,
Theorem 16.5 : MGF of non-standard normal distribution
の積率母関数および特性関数は
Theorem 16.6
とする.定数 に対して
としたとき, となる.
に従う確率変数の特性関数は
なので, の特性関数がこれと一致することを示せば良い.
正規分布の再生性
Def: 確率分布の再生性
確率分布 について,2 つの独立な確率変数 が に従うとする.このとき,
が成立するとき,確率分布 は再生性をもつという.
二項分布,負の二項分布,ポアソン分布,正規分布などは,再生性を持つことがしられています.
Theorem 16.7 : 正規分布の再生性
正規分布は,location parameter, scale parameter両方について再生性を持つ.つまり,
確率変数 は独立なので
のMGFが のMGFと一致するので
確率変数 のそれぞれの密度関数を で表したとき, の確率密度関数 は畳み込みにより以下のように表せます.
従って,
ここで,最終項の指数部分について, についてまとめると
ここでガウス積分より,
以上より,
これは, の確率密度関数と一致するので,
Theorem 16.8 : 個の正規分布の再生性
確率変数 が互いに独立に に従うとする. を定数としたとき,確率変数 について,
が成立する.
及び,互いに独立な確率変数の合計和なので
これは確率分布 の積率母関数と一致するので
が成立する.
Differential Entropy
Def: 微分エントロピー
連続確率変数 について,確率密度関数が で与えられているとする.このとき,微分エントロピーは以下の形で定義される
なお, は通常 が用いられる
平均 , 分散 をもつ確率分布のうち,正規分布は微分エントロピーを最大にする分布として知られています.
▶ の微分エントロピー
の確率密度関数を として,微分エントロピーの定義より
なお,自然対数で表現する場合,
Theorem 16.9
平均 , 分散 をもつ確率分布のうち,正規分布は微分エントロピーを最大にする分布である.
(注意: 制約付き最大化問題を解くにあたって,ラグランジュの未定係数法が使用できると仮定してます)
▶ 汎関数の定義
▶ 極値条件の計算
▶ 条件(A)の整理
条件 より以下を得る
なお扱いやすいように として以下の形で表す.
▶ の消去
を に代入すると, より
このとき,等号が成立するためには が必要であることが分かる.また,ガウス積分より
従って,
▶ の消去
と より
が成立するためには, が偶関数になる必要があるので
従って,
▶ の消去
を整理すると
より
従って,
以上より, 微分エントロピーを最大化する は
となり,正規分布となることが分かる.
📘 REMARKS
- より location paramter を変化させても,微分エントロピーは限界的には増えないことが分かります
- より scale paramter を増大させると,微分エントロピーは限界的に増大することも分かります
他の確率分布との関係性
▶ Example 16.2 : 二項分布の極限分布としての正規分布<
を正の整数として, とし,
という確率変数を考えます. となるような確率を考えてみると
ここでスターリングの公式より十分大きい正の整数 について
と近似できるので